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「孤高のメス」WOWOWドラマ第8話最終回あらすじ感想-究極にして残酷な賛辞「孤高」

2019年2月28日

現役医師大鐘稔彦おおがねなるひこ氏のベストセラー小説「孤高のメス」第8話(最終話)のあらすじを紹介します。

「孤高のメス」ドラマシリーズの登場人物はこちらに

前回までの「孤高のメス」

急死した卜部うらべのポストに就く新しい教授には実川さねかわが選出されました。

甦生こうせい記念病院では、脳死状態の少年武井誠の肝臓を町長大川に移植することが決まっています。

当麻とうまから移植手術の手伝いを依頼された実川は、それを快諾。今や自由になった実川と天才外科医当麻のタッグによって肝移植の未来が開拓されていくはずでした。

ところが実川は徳武とくたけの牛耳る肝移植研究会の理事に任命されます。

実川はこれまで以上に移植のガイドラインに縛られる立場になり、今度の手術を手伝うことができません。

「ドナーからの肝臓摘出とレシピエントへの移植の両方を単独で執刀するのですか?」と尋ねる実川に「医師の使命です」と答える当麻の表情には、日ごろの穏やかさとはかけ離れた怒りが浮かんでいました。

 

孤高のメス第8話のあらすじ

移植手術成功

日本初の脳死肝移植は成功し、移植を受けた大川町長は見違えるように元気になりました。

徳武教授の呼び出し

ひとりの患者の命が救われ、ドナーの母親も喜んでいます。

でも相談もなく移植を決行された徳武は面白くありません。

ことの次第を説明しろと迫られた当麻が「移植手術とは、患者の容態に応じて能力のある医師がするべきものであって、施設ごとに認可しようという研究会の方針には賛成しかねる」と正論を述べると、徳武はその権力をふるい、当麻を移植学会から除名、さらに大川を診察することを禁じます。

島田院長は泣く泣く、当麻に謹慎処分を言い渡しました。

当麻告発

脳死は人の死か。この問題がクリアになっていない現状では、脳死者の心臓を止めて臓器を取り出すことは殺人と解釈されかねません。

謹慎中の当麻は警察へ出向くよう要請を受けます。

「不正医療を告発する会」と名乗る団体が、当麻を告発したのでした。

「同じ状況になれば何度でも同じことをします」

堂々とそう宣言する当麻をマスコミは追いまわし、野本ら近江大病院派閥の医師は、全員辞職も辞さないと反旗を翻します。

身の振り方を考える当麻

当麻は、甦生記念病院に辞表を提出します。

刑事訴追は見送られたものの、移植手術の波紋は想像以上に大きく、これ以上病院に迷惑をかけられないというのがその理由でした。

レシピエント大川町長とドナーの母静香の記者会見

町長の大川は、当麻の窮状に心を傷めています。

経過は極めてよく、すぐに退院できる運びとなりましたが、そのために当麻が批判にさらられたのでは喜べるはずがありません。

町長は、脳死者として肝臓を提供した誠の母静香と共同の記者会見を開きます。

健康を取り戻した患者の顔と、「移植は死んだ息子本人が望んでいたことであり、自分から当麻先生に強くお願いして実現したことだ」と話す母親の言葉には、何者にも勝る説得力があり、町長が「これをきっかけに移植に関する議論を深めていただきたい。移植を待つ患者を一日も早く救ってほしい」と訴えると、会見場に拍手が起こりました。

打算のメスと孤高のメス

「甦生を辞めるなら助教授としてうちへ来てくれ」との実川の依頼を、当麻は断ります。

大学病院は、当麻には合いません。

でも、患者の診察すらできなくなった今回の体験は当麻をも迷わせるものでした。

「分からなくなりました」

当麻は、実川にだけそう打ち明けます。

実川の返した言葉もまた、他の誰にも言うはずのないことでした。

「結局のところ野心があって医療に当たっている私のメスは打算のメスだが、患者のことだけを考えるあなたのメスは孤高のメスだ」

真剣な面持ちでその言葉を受け止め、静かに礼を言った当麻は、湖水町を去っていきます。

そして30年後の2019年。

どこかの田舎町で当麻はメスをふるっています。

机の上の新聞には、今年50例目の肝移植手術が行われたことが報じられています。

 

これでWOWOWドラマ版の「孤高のメス」は終わりです。

 

「孤高のメス」8話の感想

考えさせられる作品でした。

脳死は人の死か否かという命題や、臓器移植の倫理については、まったく迷いはありません。

脳死は人の死だと思いますし、使える臓器なら使ったらいいと、なんのためらいもなくそう言えます。

私が考えさせられたのは、脳死問題ではなく信念を貫くという生き方についてです。

当麻は、利益よりも信念に生きる高潔な医師です。

本当に尊敬すべき人物ですが、一つ間違えば「困った人」なのでは?

意地の悪い見方をすれば、当麻鉄彦とは

もっとハイレベルな病院に行けばいいのに募集をかけてもいない地方病院に突然入って人事を混乱させた人

であり

バリバリ移植したいならずっとアメリカにいればいいのに、どうしたわけかまだ移植手術の難しい日本へ戻り、なにを思ったか地方のしがない病院に在籍して、そのわりには海外基準でオペを敢行したがる理解不能な医者

そして

かき回すだけかき回してどっかへ逃げても、なんだかんだで腕がいいから食いっぱぐれはしない医者

なのでは?

いえ。私自身はそうは思ってないですよ。

でも、たとえば野本なんかの立場から見たらこんな風でしょう。

周囲との調和やバランスをとりながら己の道を進むことの難しさが、甦生記念病院内のゴタゴタや移植手術周辺のお偉方の動きによく表れているなと思います。

 

そして執刀した患者を診察することを禁じられる事態に及び、当麻自身も悩みます。

以前から何度か思うことはあったでしょう。

迷っては思い直してきたのが実情かもしれません。

実川との別れに際してこぼれ落ちた「分からなくなりました」という台詞は、さりげないようでいてその実とても重大なカムアウトでした。

「あなたのメスは孤高のメス」

実川の返したこの言葉は、究極の賛辞であると同時に、ある意味残酷な言葉でもあります。

「あなたのいる高みには誰も行けない。あなたはひとりで戦うほかない」と、天才の悲劇を浮き彫りにしているのです。

もちろん、実川に当麻を傷つけようという意図はありません。不慮の残酷とでも言いましょうか。

あの時当麻は何を思ったのか、その後、何を道しるべに無人の高みを目指したのか。

語られることはありません。

でも当麻は、自分には器用に立ち回ることなどできず、こんな風にしか生きられないことを知っていたでしょう。

30年後の当麻医師の、苦悩とともに自信を秘めた横顔に、情熱の命ずるままに孤高の境地を突き進んだ歳月が垣間見えるようでした。

 

「孤高のメス」には続きがあります

ドラマ版の原作は「孤高のメス 外科医当麻鉄彦」。文庫化されていて全6巻です。

やはり当麻が甦生を去るところで終わるのですが、小説には続きがあります。

続編は「孤高のメス 神の手にはあらず」でその後台湾に渡った当麻の物語です。

台湾には当麻の母(死んだ人)を恩人と慕う人物がいて、今は大きな病院を経営しています。

小説だとお母さんの葬儀の時にその人の病院に招聘されているのです。

さらに「孤高のメス 遥かなる峰」「孤高のメス 死の淵よりの声」「孤高のメス 命ある限り」(これで完結です)と続きます。