小説「ファインダーズ・キーパーズ」登場人物あらすじなど-キングの三部作2作目ドラマのS3
スティーブン・キングのミステリー三部作、ミスター・メルセデスシリーズの2作目「ファインダーズ・キーパーズ」
ドラマ「ミスター・メルセデス」シーズン2は、三部作の最後の作品「任務の終わり」の部分です。
シーズン2公開後にシーズン3の制作が決まり、「ファインダーズ・キーパーズ」がS3になると発表されました。
(アメリカでの放送は2019年9月10日~)
ここでは原作について登場人物とあらすじをまとめます。
Contents
タイトル「ファインダーズ キーパーズ」とは
ブレイディの事件が(一応)片付いた後でビル・ホッジスが開業する私立探偵社が「ファインダーズ・キーパーズ探偵社」です。
ですが、「Finders (are) keepers」は「拾い物はもらい物」という意味の慣用句でもあります。
本作では拾い物の所有権が重要な要素になります。
ファインダーズ・キーパーズの登場人物相関図
ネタバレしない範囲での相関図です。タップで拡大してください。
一旦ブレイディから離れて進行するストーリーですが、同じ町の出来事で世界はつながっています。
主人公のピート(警察のピートではなく高校生です)の父親は、就職フェアでメルセデス事件に遭った被害者です。
ホッジスやホリー、ジェロームも登場します。
ルー(ブレイディと同じPC販売店にいた女の子)やアイダ(ホッジスの隣人)は出て来ません。
リクガメのフレディは原作にははじめからいません。
上の相関図は、最後には下のようになりますが、見ちゃうと展開が分かってしまいます。
最後はどうなっているのか知りたい人はタップして開いてください。
ファインダーズ・キーパーズの登場人物
ネタバレしない程度の登場人物紹介です。
ファインダーズキーパーズで初めて登場したキャラクター
ジョン・ロススティーン
何年も断筆している人気作家。
代表作はランナー三部作。
モリス・ベラミー
小説家ジョン・ロススティーンの著作「ランナー」シリーズの主人公ジミー・ゴールドを崇拝するあまり、ロススティーンの創作した展開が受け入れられず、家に押し入るサイコパス男。
その後逮捕される。
フレディとカーチス
モリスとともにロススティーン宅に強盗に入る仲間。
文学に興味はなく、ロススティーンの家には現金がたんまりあると聞かされて話に乗った。
アンディ・ハリディ
逮捕前のモリスの唯一の友人だった男。
現在は古書店の店主。
文学よりも物品としての古書を愛するコレクター嗜好。
チャーリー・ロバースン
モリスと同じ刑務所にいた男。
モリスが代筆した再捜査を嘆願する文書がきっかけで冤罪が証明され釈放された。
ピート・ソウバーズ
男子高校生。
経済事情の悪化から不仲になった両親の間で悩む。
成績は良く妹思いの青年で、アメリカ文学好き。ロススティーンのファン。
以前モリスが母親と一緒に暮らしていた家に住んでいる。
ティナ・ソウバーズ
ピートの妹で小学生。
ピートほど優秀ではない。
ミスターメルセデスで登場した芝刈りジェロームの妹バーバラとは友人関係。
トム・ソウバーズ
ピートの父
メルセデス事件で足に大けがを負い、今も杖が必要。
リンダ・ソウバーズ
ピートの母
身体のきかないトムの代わりに苦しい家計を支えるが、メルセデス事件以来夫婦仲はうまく行っていない。
ハワード・リッカー
ピートの高校のアメリカ文学教師
今も花柄のシャツやベルボトムを愛用していることから生徒たちには「リッキー・ザ・ヒッピー」と呼ばれている。
ミスター・メルセデスから継続しているキャラクター
Mr.メルセデスの登場人物詳細はこちらに
ビル・ホッジス
警察を引退後、メルセデス事件の犯人ブレイディが新たに画策した爆破テロを水際で防ぐ。
今は心臓にペースメイカーが入っているものの、野菜中心の食生活と毎日5㎞のランですっかり痩せて引き締まっている。
折に触れてブレイディの病室へ様子を見に行っている。
ホリー・ギブニー
メルセデスキラーに車を使われたオリヴィアの遺産を相続していたジェイニー(ブレイディの仕掛けた爆弾により死亡)が、ホリーに多くの財産を分与するとの遺言状を残していたため、経済的には自由。
元々発達障害のあるホリーの問題は、すっかり消えたわけではないが、以前よりずっと自然に人とのコミュニケーションがとれるようになり、ホッジスの探偵事務所「ファインダーズ・キーパーズ」を手伝っている。
ジェローム・ロビンスン
大学に通うため実家を離れているが、帰省するとホッジスの家に立ち寄る関係。
ジェロームの家族と、ホッジス、ホリーは、今も親しくつきあっていて、母のターニャがホリーにファッションのアドバイスをしたり、妹のバーバラが困っている友人(ピートの妹ティナ)にホッジスを頼ることを提案したりする間柄になっている。
バーバラ・ロビンスン
ジェロームの妹
ピート・ソウバーズの妹ティナの友人で、ピートに「バーバラのような子が同じ学校にいればティナのためにいい」と思われるほどの女の子。
ブレイディ・ハーツフィールド
メルセデス・キラー
美術館爆破未遂事件の際、ホリーに頭を繰り返し殴打され植物状態だったが、1年ほど後、突然を目を開け、ナースに話しかけた。
以来ほとんど一日中ぼんやりしているものの、時々「ママに会いたい」と口にする。
度々病室を訪れるホッジスと話したことはなく、ホッジスのことを分かっているのかどうか不明。
でも…
病室を出ようとするホッジスの背後でブレイディの写真立てがかたんと落ち、それを拾い上げて元の位置に置いたホッジスがドアのほうを向くと再び写真立てが落ちたことがある。
ファインダーズ・キーパーズ以降の登場で次回作で重要になるであろうキャラクター
図書館アル
ブレイディが入院している脳神経外傷専門クリニックの60代看護助手
看護カートに患者の娯楽用の本や新聞をたくさん入れていることから「図書館アル」と呼ばれている。
アルによると、最近のブレイディは電子書籍リーダーでゲームのデモ画面を眺めるのを気に入っているそう。
Nooo Al, throw away that Zappit #MrMercedesTV – #FishinHole pic.twitter.com/cj4y5bz624
— (@Fawn_Liebowitz) 2018年9月13日
フェリックス・バビノー
ブレイディが入院しているクリニックの脳神経科医
ドラマ「ミスターメルセデス」シーズン2のDr.バビノーはこの人↓ですが、役どころは全然違うかもです。
Babineau, what have you done? #MrMercedesTV pic.twitter.com/ntd2DTLirl
— Mr. Mercedes (@MrMercedesTV) 2018年9月13日
ファインダーズ・キーパーズのあらすじネタバレなし
モリスが隠したモレスキンのノート
傑作小説「ランナー」シリーズの作者ロススティーン宅に3人の男が押し入り、金庫をあさっています。
主犯格のモリスの目当てはお金ではありません。
モリスは、ロススティーンのファン…と言うより「ランナー」シリーズ主人公ジミー・ゴールドの大ファン、ジミーを信仰していると言ってもいいほどの傾倒ぶりなのです。
シリーズは、「ランナー」「ランナー行動を見る」「ランナー、ペースを落とす」と続いた三部作で、栄誉ある賞も受賞しています。
でもモリスは、最後の「ランナー、ペースを落とす」が気に入りません。
侵入者に気づいたロススティーンが姿を見せると、モリスは「三作目で描かれるジミーは本来の彼ではない。お前はアメリカ文学史上最高の英雄の顔に泥を塗った」と言い立て、頭を撃って殺してしまいました。
ところが、金庫の中にドル札とともに収められたモレスキンのノートを発見したモリスは愕然とします。
そこにはジミー・ゴールドシリーズの続編が書き付けられていたのです。
ロススティーン以外の誰も目にしたことがないであろうジミーシリーズ続編の手書きノートはは百冊以上あり、とてもすぐには読み切れそうにありません。
モリスは、ノートと札束を古いトランクに詰めて家の近くに埋めますが、その夜のうちに逮捕されてしまいます。
1978年のことでした。
ピートの発見したトランク
時は流れて2009年。
高校生ピート・ソウバーズの両親は、いつもお金のことでケンカしています。
父トムは、メルセデス事件の被害者で、足に大けがを負って今も普通に歩くことが出来ず、痛み止めが手離せません。
そんな状態では仕事もうまく行かず、二人の学童を抱えるソウバーズ家は火の車なのです。
両親は離婚するかもしれない。
ピートだけでなくまだ小学生の妹ティナもそう思い始めています。
ピートが大雨で削られた地面の下にモリスのトランクを発見したのは、そんなある日のことでした。
ピートは、埋められていたドル札を匿名で父親宛てに送ることを考えつきます。
どこからか送られてくる札束のおかげでピートの家には以前のような平穏が戻りましたが、妹の進学を前にその資金も底をつきます。
再び胸を痛めるピートがトランクにあったノートのとてつもない価値に気付くころ、モリスが仮釈放され、トランクを掘り返しにやって来ます。
ファインダーズ・キーパーズの感想など
私には「ミスター・メルセデス」より面白かった「ファインダーズ・キーパーズ」
私にはとても面白いと感じられる小説でした。
「ミスター・メルセデス」よりも面白いと思ったくらい。
「ミスター・メルセデス」では、ブレイディにリアリティが感じられなくてどうも入り込み切れなかったのですが、モリスの性格傾向には一貫性があって不自然な感じがしませんでした。
十代は大人が思う以上に大人
キングはその作品群において、少年期の苦悩や成長というテーマを繰り返し扱っているように思います。
どう言ったらいいのか…「少年の本気とは本当の本気であり、少年の真剣とは本当の真剣である」という真理に基づいて、その無垢な美しさを敬うようなスタンスが、キング作品の随所に見られるなと思うのです。
ピート・ソウバーズの大人顔負けの責任感にはその傾向が顕著に表れています。
慕っている先生にも真相を話さず、助けの手を差し伸べるホッジスから逃げてまで、海千山千の古書店主との取引に向かうピートの胸の内を思うと、涙が出そうになります。
妹ティナの思いがけない洞察力にも胸を打たれます。
兄妹が感じていたのは、見当違いな責任感かもしれませんし、無用の煩悶かもしれません。
でも誰もが十代の頃に感じたことのある感情でしょう。
今はもう大人側の立場になった身としては、こんな子供たちの行動を愚かなことと切り捨てたり笑ったりする人間にはなりたくないなと思います。
おなじみのメンバーの現在に安堵と不安
前作からのメンバー顔ぶれでは、ホリーが自分の足で自分の人生を歩こうとしているのをうれしく読みました。
ホッジスが痩せて健康に留意する生活をしていることも喜ばしいことと感じましたが、それはなんのためなのかと考えると、まだホッジスのメルセデス事件は終わっていないからに他ならず、この後何が起きるのか怖くなります。
三部作は超自然的な要素を排除した作品?
などなど…私はとても気に入った「ファインダーズ・キーパーズ」ですが、気に入った理由の一つには、元々超自然的な力がどうこう…という話よりも現実に即した物語のほうが好きだということもあるかと。
キング作品の中で一番好きと思っているのは「ミザリー」ですし。
(「ファインダーズ・キーパーズ」は多分に「ミザリー」的なところのある作品でもあります)
…ところが!
キングの人生最後のネタ?
最後の最後まで読むと…
ブレイディが…ええ!?
待ってくれキング。
途中から超常現象モノへ移行するのは禁じ手ではあるまいか。
とにかくメルセデス三部作はこれまでの雰囲気で続けて欲しいのに裏切らられたような心境に…
これで最後の「任務の終わり」がアレだったら、拳銃持ってキングの家に押し入りたい気持ちになるかも。
…!!
もしかすると、こう思わせるためにわざと落胆させているのか?
読者とは多かれ少なかれモリス的な部分を持っているものだと身を持って分からせるために作家としての看板をはったネタを?
…そしたら、キングは今頃モレスキンに続き書いてるんじゃ…
死後に自宅の金庫を開けたら第四部、第五部と続くホッジスシリーズ本当の完結編が!とか。
金庫の番号がロススティーンの金庫と同じだったら最高だわ。
「右に2回31、左に1回18、右に1回99。0に戻す」
なんだかそうとしか思えなくなってきちゃいました。
スティーブン・キングくらいの人になると、死後に読者を楽しませる仕掛けを用意していてもおかしくありません。
うん。全然おかしくないよ。やってくれキング。