「ヒトラーの贋札」登場人物キャストと見分け方,あらすじ感想-残酷な矛盾をはらむ任務へのスタンスを見比べる面白さ
「ヒトラーの贋札」というタイトルですが、映画の中にヒトラーは登場しません。
ヒトラー関連、ナチス関連の映画の中で、ちょっと違う雰囲気の作品です。
「ヒトラーの贋札」登場人物の見分け方とキャスト
似たような服装の外人男ばっかで誰が誰だか分かりにくいです。
写真を見てしまうと結局覚えられません。見分けるコツは、顔を言語化することです。
ユダヤ人贋札作りチーム
サリー・ソロビッチ
贋札や偽造パスポートを作って稼いでいたが、ナチス政権下のドイツで逮捕され強制収容所へ送られる。
本当の名はサロモン・ソロビッチ
見分け方:頭頂部が涼し気で面長、鼻筋が左に曲がってる人
コーリャ
画学生
見分け方:小柄で丸顔の青年。唇にボリュームがある人
ブルガー
コロタイプ写真の印刷技師
最初に与えられた古着を拒否する人
見分け方:長身で薄い唇を常時横へきゅっと引いている。額が四角く広い人
ブルガーは実在の人物です。映画「ヒトラーの贋札」はブルガーの著書「ヒトラーの贋札 悪魔の工房」を原作にしています。
ツィリンスキー
広告カメラマン
見分け方:長身で細長い顔。髪が伸びてからはストレートの横分けになる人
ロセック
本当は鉄道員だったが印刷工と偽って贋札作りチームへ入った
見分け方:コーリャをおじさんにした顔の人
アツェ
贋札製造グループの班長
見分け方:収容所には似つかわしくないほど太ったおじさん
クリンガー
医師
見分け方:銀色よりの白髪にメガネの人。勤務時は白衣着用
ナチス親衛隊員
ヘルツォークとホルストは帽子と軍服で見分けて下さい
ヘルツォーク
親衛隊少佐
元は捜査局の贋札担当でソロビッチを逮捕して出世した
将校用の制帽をかぶっているのがヘルツォーク。制服はテーラードのジャケットにネクタイ。
こういう制服。
↑上の写真はヴァルター・シェレンベルク国外諜報部門局長。
この人の部下がベルンハルト作戦を実行しました。
ホルスト
親衛隊員
ヘルツォークの部下だが、ユダヤ人チームへの好待遇を過剰と思っているフシがある
規格帽をかぶっているのがホルスト
制服の襟はこんな感じ(ちょっと違いますが大体こんなふう)
「ヒトラーの贋札」あらすじネタバレなし版
贋札作りの天才ソロビッチ逮捕
1939年ナチス政権下のドイツ
ユダヤ人のサリー・ソロビッチは、絵画の才能を贋札作りに活かして生活していましたが、逮捕され、強制収容所へ送られます。
収容所で紙切れに描いた絵が看守の目に留まり、ソロビッチは、軍人たちの肖像を描くことで多少の優遇を受けるようになりました。
ベルンハルト作戦
ある日ソロビッチは、ザクセンハウゼン収容所へ移送されます。
移送のトラックで一緒になった青年コーリャは、ソロビッチの卒業した美術学校の学生でした。
ザクセンハウゼンではジャケットとズボンに煙草まで与えられ、これまでの収容所とは比べものにならない清潔なベッドで寝るよう指示されます。
軍は、絵や印刷、製紙の素養のあるユダヤ人を集め、贋札を作らせようとしているのでした。
大量の贋札を英国米国に流通させてインフレを起こす作戦、ベルンハルト作戦です。
ユダヤ人にやらせるのは、終戦の時には口封じに殺すつもりだからでしょう。
ソロビッチは、贋札修正班の責任者に任命されました。
コーリャは、柔らかいベッドを喜んでいますが、ブルガーは、印刷機を見せられて泣いています。
「ヒトラーの贋札」あらすじネタバレ版
結末までネタバレしています。
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「ヒトラーの贋札」の感想など
舞台は強制収容所で、贋札作りチームの棟の周囲では他のユダヤ人たちが日々虐待されています。
贋札製造班の中でもコーリャの死など酷いことがたくさん起きました。
そうした事情を考えると「面白い」と言ってはまずい気もしますが、感想を一言で言うとやっぱり「面白い」です。
まずユダヤ人の彼らと贋札との関係の悩ましさが興味をそそります。
贋札は敵国をインフレに陥れるための兵器であり、ベルンハルト作戦の究極の目的は戦争に勝つことです。
ドイツ勝利で終戦すれば、贋札作りに関わったメンバーは殺されるでしょう。
ユダヤ人の彼らにとってこの作戦は、失敗しても成功しても命がないことに変わりのない残酷な矛盾をはらんだものです。
そうした中で抵抗の姿勢を示すブルガーの最大の動機は主義と思想、正義を守ることだったと思いますが、現実的に考えた場合にも納得のいくものです。
贋ドルは、大量生産が計画されていて、ひとたび贋札が完成すれば米国は日ごとにインフレしていきます。
それはドイツの勝利が近づくことであり、贋札チームの処刑の日が近づくことです。
ならば敵に手を貸すよりも民族の誇りを守って戦うほうがいいと考える人がいても少しも不思議ではありません。
でもソロビッチは、持ち前の合理的精神で「今日の銃殺より明日のガス室のほうがいい」と言います。
これもまた一理ある選択です。
時々刻々と情勢の変わる戦時下では一日でも長く生き延びることが、最良の結果を得る可能性を高めることに他なりません。
彼らにとって最良の結果とは、命あるうちにドイツが敗戦することです。
事実、その通りになりました。
運が良かったとも言えますが、幸運を引き当てる最初の条件は生存していることでした。
敵国にインフレを起こそうとする戦法そのものにも面白さがあり、やはり「ヒトラーの贋札」はとても面白い映画です。