時間を行き来する母ルースに関する各人の見解
ヘンリーの母ルースは、過去と現在を行ったり来たりしてます。
神経科では、認知症が進行すれば時間や空間の認識ができなくなると説明されています。
謎の青年はパングボーンに「時間は彼女の敵だ」と言いました。
孫のウェンデルは「タイムウォーカーみたい」と解釈しました。
タイムウォーカーとは、ウェンデルのプレイしているゲームのキャラクターです。
生存者の中に死者が紛れ込み、死者は敵。タイムウォーカーだけが死者を完全に殺すことができ、理論上、敵をすべて倒せば時間を正せるというルールだそうです。
ルースがウェンデルに話したのは「かつて人生は前に進むだけだったけれども、ある時からそうでなくなった」
ルースの頭の中では、過去もそこにあり、そちらへスリップしてしまうこともあるということのようです。
なのでルースは、家のあちこちにチェスの駒を置きました。
駒があれば、それは現在だと分かるから。
ルースの記憶
6話では、過去の出来事と現在の出来事が交錯する形で出てくるので、ちょっと分かりにくいのですが、まず母親の回想部分をまとめます。
死んだ犬パック
パングボーンと暮らすルースは、野良犬に餌を与えて可愛がっていました。
その犬は家の前で車に撥ねられてしまいます。
パングボーンは、瀕死で苦しむ犬の首を切って死なせ、ルースはスーツケースを出してきて棺にします。
ルースは昔ヘンリーが飼っていた犬のパックのことを思い出しています。
ある日いなくなり、夫は「逃げたのだろう」と言いますが、ごみ箱には殺鼠剤の空き箱が。
近くをヒメコンドルが飛んでいました。
パックがどうなったのか怖くて確かめられませんでした。
ヒメコンドルは、北米などに生息するコンドルで、死体の匂いを嗅ぎつけてやって来ると、Wikipediaにあります。
青年を病院へ連れて行ったとき、突然庭に黒い鳥の死骸が落ちてくるアクシデントがありました。
カラスかな?と思っていたのですが、あれもヒメコンドルだったのかな?
ヒメコンドルは体長64 – 81 cmだそうです。
森で拳銃を持ち出す夫マシュー
ルースとヘンリーは父マシューに連れられて森を歩いています。
サンドイッチを食べようとシートを広げるとマシューが拳銃を取り出しました。
何をするつもりなのかと聞くルースには答えず、自殺について話し始めたマシューは、自分の耳に銃口を当てています。
ルースは「病院へ行きましょう」と言いますが、マシューは受け流し、ヘンリーに「神の声が聞こえるか」と尋ねます。
ヘンリーには何も聞こえません。
マシューはどうしてもヘンリーに「神の声」を聞かせようと躍起になっていて、たびたび森へ連れ出していました。
雨の降る森に裸足で立たせていたことも。
ヘンリーが思い出そうとして思い出せなかった「父と森でしていたこと」は、神の声を聞く訓練でした。
母と息子は、父の奇行に恐怖と疲れを感じていたのでした。
ルースはヘンリーに、お父さんはグリオーマのせいで幻覚が見えるのだと説明しています。
グリオーマは神経膠腫のことで、脳腫瘍の一種です。
参考:神経膠腫(グリオーマ)(しんけいこうしゅ[ぐりおーま])|国立がん研究センター
パングボーンと逃げようとしてやめたルース
保安官パングボーンは、夫の奇怪な行動に悩まされるルースに、「どこかへ逃げよう」と提案していました。
ヘンリーと3人で他の場所で暮らそうと。
一度はスーツケースに荷物を詰め込んだルースでしたが、思いとどまり、キャッスルロックに残ったのでした。
銃声とパングボーンとの再会
マシューは死に、息子ヘンリーはテキサスへ。
ルースが一人で暮らすようになっていた頃、家にパングボーンがやって来ます。
しばらくよその土地で生活していたパングボーンは、最近キャッスルロックへ帰って来たのでした。
パングボーンは「君の家のほうで銃声が聞こえたと通報があった」と言います。
保安官はとうに引退していますが、今でも町の人々は何かあるとパングボーンを頼るのだそうです。
「キャッスルロックへ戻ったのは君がいるからだ」と言い残して立ち去ろうとするパングボーンをルースが引き留め、ふたりは一緒に暮らすようになりました。
現在の出来事
上に書いたのは、ルースの記憶です。
ここからは現在起きていることになります。
死んだマシューと同じことをする青年
ルースが床にこぼした薬を拾っていると謎の青年が裏口から入って来ました。
死んだ夫マシューの服を着ています。
家の中で靴を脱ぐのもマシューが習慣にしていたことでした。
青年は結婚式で使った曲のレコードをかけ、ルースと踊り始めます。
危険を察したルースは、孫のウェンデルにお金を渡して「バスに乗ってショッピングモールへ行きなさい」と指示しました。
青年はルースにゴミ箱にあった鎮静剤を飲むようすすめます。
ルースは、以前にパングボーンに教わったマジックのコイン消しのテクニックを応用して、薬を飲んだふりをしました。
クローゼットには拳銃がありますが弾が装てんされていません。
弾丸は金庫に入れたとマシューが言っていたのは覚えていますが、金庫の開け方が分かりません。
「2階の金庫の番号はいくつだったかしら」
さり気ない調子で青年に尋ね、ルースの誕生日が開錠の番号だと聞き出しました。
隙をうかがって金庫を開けるルースでしたが、そこにあるはずの弾がありません。
青年がルースを探す声が聞こえます。
ルースは近くにあったドライバーを手にバスルームに入り、シャワーカーテンの奥で待ち構えます。
青年が入って来ました。ルースは聞きます「あなたは誰?」
「ティーカップよりも小さい…」
青年の答は、子供時代のヘンリーとルースのゲームのやり取りの一部を再現したものでした。
出題者がひとつのキャラクターを設定し、回答者の「あなたは誰」の問いに答えてヒントを出すゲームです。
しかし青年がそれを言い終わるよりも早く、ルースはシャワーカーテン越しに青年を刺して逃げ出しました。
弾はスーツケースの中
ルースはようやく弾のありかを思い出します。
マシューを置いて出て行こうと荷造りをした日、弾丸をスーツケースに詰めたのです。
スーツケースは今、野良犬の棺となって裏庭に埋まっています。
必死に土を掘り起こし、スーツケースから弾丸を取り出したルースは、小屋へ逃げ込みますが、そこに彼が。
ルースは発砲します。
暗い小屋の中、ルースが撃った人影はパングボーンでした。
パングボーンは死に、ルースはマシューを撃ったと思い込んでいます。
モリーがマシューを殺したことを知っていたルース
※少し時間戻ります。
ルースが弾丸を探している途中で、誰かがドアをノックします。
ドアの外に立っていたのはモリーでした。
ヘンリーの感情の読めるモリーは、何かが起きていることに気付いたのでしょう。「きっと恐ろしいことが起きる」と言います。
ルースはそれには答えず、「あの夜部屋であなたを見た」
崖から落ちたマシューの寝室で一緒に寝ていたルースは、眠っていて何も気づかなかったのではなく、モリーのすることを見ていて黙っていたのでした。
謝るモリーにルースは「あれでよかった」と言います。
「でも彼は帰って来た。それを正す」そう言って、モリーを家には入れずドアを閉めます。
そしてパングボーンを撃ち殺す悲劇が起きたのです。