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鬼平犯科帳スペシャル「一寸の虫」登場人物キャストとあらすじ感想など

2019年3月17日

鬼平犯科帳」は池波正太郎の同名小説を原作にした時代劇シリーズです。

何度も連続ドラマになっていますが、2001年にレギュラー放送を終えてから14本の2時間スペシャル版が制作されています。

「一寸の虫」

鬼平犯科帳スペシャル「一寸の虫」は2011年制作のドラマです。

池波正太郎の「鬼平犯科帳」文庫版では18巻に収載されている「一寸の虫」が原作です。

鬼平犯科帳「一寸の虫」ゲスト登場人物

主要キャストは、すべて中村吉右衛門版の出演陣が続投しています。

富田庄五郎(とみた-しょうごろう)

演:原田龍二

三か月前に盗賊改めに加わった同心

剣の腕がいいことから推薦された

富田幸(とみた-さち)

演:若村麻由美

富田の女房。病気療養中

鹿谷の伴助(しかだに-の-ばんすけ)

演:北見敏之

富田を脅迫する男

仁三郎(にさぶろう)

演:寺脇康文

二年ほど前からの密偵。平蔵への忠誠心が強い

船影の忠兵衛(ふなかげ-の-ちゅうべえ)

演:三國連太郎

盗みの三箇条を厳格に守る盗賊の頭で仁三郎のかつての師にして生涯の恩人

鬼平犯科帳「一寸の虫」あらすじネタバレなし

密偵仁三郎

密偵仁三郎にさぶろうの活躍により盗賊不動の勘右衛門かんえもんの居場所を探し当てた火付盗賊改めは、隠れ家に踏み込みました。

全員捕縛も間近と思われたその時、勘右衛門が柱の陰で鉄砲を構えているのに気付いた仁三郎は、ためらいなく平蔵の前に飛び出して弾を受けます。

仁三郎の忠誠心に与力同心一同感嘆しきり。

弾は肩を貫通し、命に別状はないものの当分は動けないでしょう。

仁三郎は、女房に死なれて独り身です。

平蔵は、おまさにしばらく身の回りの面倒を見てやるよう頼みました。

それを聞いてまた感涙する仁三郎は「俺には生涯恩を忘れちゃならないお人がこの世にふたりいる」と話します。一人は平蔵です。そしてもう一人は盗賊船影ふなかげ忠兵衛ちゅうべえ

実は仁三郎は、忠兵衛に破門され一味から追い出されています。

忠兵衛は、仁三郎の盗賊時代の頭で「殺してはいけない。犯してはいけない」と人を傷つけぬ盗みを信条とする男でした。

なのにある時仁三郎は、ふと魔が差し、奉公人の女に手をつけようとしているところを忠兵衛に見つかって、五十叩きの上追放されたのです。

それでも仁三郎は、忠兵衛の厳しい措置に感謝し、今も忠兵衛への思慕を捨てていません。

同心富田の殺し

葦の茂る川を行く小舟の上で橋本屋助蔵が斬られ、続いて舟を漕いでいた男も斬られました。

斬ったのは、火付盗賊改め同心富田庄五郎です。

富田が同心に加わったのは三か月ほど前。それまでは浪人暮らしだったといいます。

富田への脅迫状

どこかの男が富田宛の書状を役宅へ届けます。

富田は人目のない部屋でその書状を広げていますが、酒井を探す平蔵が障子を開けてしまいます。

慌てて手紙を隠す富田の様子に不審を感じる平蔵は、粂八くめはちに富田を探るよう命じました

病気の女房

富田の女房さちは、病気でずっと寝込んでいます。

長患いで気持ちも弱くなり「あなたに何かあれば私も生きてはいない」と言うことも。

このところ様子のおかしい富田が心配でならないのです。

さらなる殺しと脅迫

日の暮れた墓地で富田が脅迫状の男と話しています。

男は、富田が船で殺した橋本屋の知人で「これまでの富田と助蔵のいきさつをすべて知っている、殺したのは旦那しかいない」と言い、「橋本屋殺しを黙っている代わりに百両よこせ」と要求。

富田は男を斬り殺します。

しかしそれを見ているもう一人の男がいました。

富田の事情

富田は、橋本屋助蔵に二十両を借りていました。

富田が金を必要としたのは、きっと幸の薬を買うためだったでしょう。

でも富田の懐はわびしく金を返すことができません。

そして橋本屋は、ただの金貸しではなく盗っ人だったのです。

橋本屋は、富田に酒問屋の絵図面を要求し、図面をくれたら借金は棒引きにすると約束しましたが、結局一度きりでは済まず、違う店への手引きまで強要されて殺したのでした。

今富田の前に立つ男も、富田に金のないことは承知です。

鹿谷しかだに伴助ばんすけというその男が富田にやらせようと企んでいることは、橋本屋と同じ、盗みの手引きです。

痛い目に遭っている富田は、ゆすり屋の要求に終わりがないことを知っていますが、伴助は、この話はちょっと違うのだと言います。

今度のおつとめをする目的は金品ではなく、ある男への仕返しのためで、その男を殺すことができれば後腐れなく富田を解放すると、そう請け合う伴助が恨んでやまない男の名は、船影の忠兵衛

鬼平犯科帳「一寸の虫」あらすじネタバレ版

以下はネタバレです。

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おみの

仁三郎にはおみのという娘がいます。

妹夫婦が自分たちの子として育てていて、おみのは仁三郎が本当の父親だとは知りません。

五歳か六歳くらいのおみのは、決して裕福ではありませんが真面目に暮らす両親のもとで屈託なく素直に成長しています。

鹿谷の伴助、仁三郎に助力を強要

伴助が仁三郎の前に現れます。

ふたりは、船影の忠兵衛の下にいたころの盗賊仲間です。

伴助が持ち掛けた話は、忠兵衛への仕返しでした。

仁三郎が追い出された後、伴助が人を殺す事件が起き、忠兵衛は百叩きの罰を下したのでした。

伴助は、その恨みが忘れられず復讐の時を待っていたのです。

「足を洗っているから」と断る仁三郎に伴助は、おみのの名前を出してきました。

手を貸してくれさえすれば娘には何もしない」と伴助はニヤついています。

伴助の計画

話に乗ったふりをして伴助らの盗人宿に乗り込んだ仁三郎が聞いた話は、こうです。

伴助の狙いは、浅草馬道の小物問屋谷口屋

そのおつとめに忠兵衛を誘い込み、現場で殺す

各自好き放題に乱暴狼藉してよいのは、すべての罪を忠兵衛に着せるから。

仁三郎は、忠兵衛の居場所を確かめようとしますが、あちこち転々としているとしか分かりません。

そして最後に伴助から紹介された男は、火付盗賊改めの富田

唖然とする仁三郎の前で富田は、あくまで冷静にふるまっています。

ふたりだけになると富田は、仁三郎に「このことは互いに内密に」と念を押します。

仁三郎が伴助同様、忠兵衛への恨みを晴らすためにこの仕事をするものと信じ込んでいるようです。

五郎蔵、忠兵衛を見る

五郎蔵が、偶然忠兵衛を見ます。

谷口屋の前でキセルをふかす忠兵衛のところへ奉公人らしい女が駆け寄り、何かを耳打ちしてすぐに店の中へ消えて行きました。

往年の大盗賊忠兵衛と大店おおだなの奉公女。

忠兵衛が引き込みを入れているのは間違いありません。

その日から谷口屋の周囲に盗賊改めが張り込むことになりました。

迷ったときは自分を捨てろ

おまさから仁三郎の様子がおかしいと相談を受けた五郎蔵は、仁三郎と軍鶏しゃも鍋をつつきながら話をしますが、仁三郎は何も話しません。

平蔵に伴助たちを捕まえてもらうことはできても、そうすれば忠兵衛も捕まってしまうでしょう。

断れば伴助がおみのを狙います。

忠兵衛に教えたくても居場所が分かりません。

進退窮まり一人懊悩する仁三郎に五郎蔵は「迷ったときは自分を捨てちまうんだ」と言います。

自分の都合を捨てれば道が見える。

それを聞いた仁三郎は、突然きっぱりと腹が決まったふうになり、元通りの快活さが戻りました。

長屋へ帰ると伴助の手下の男が待っています。

決行は明日。一旦伴助の隠れ家に集まり、忠兵衛一味とは谷口屋で落ち合う。

そう告げて男は帰って行きました。

仁三郎の置き手紙

おまさがいつものように仁三郎の長屋へ行くとそこは留守で置手紙がされています。

大恩ある人を助けに行く」と書かれた手紙には、

おみののことよろしくおたのみもうします

覚束ない字で何度もそう書かれています。

おまさは五鉄に走り、五郎蔵と粂八に手紙を見せました。

命を懸ける覚悟をしていることがありありと分かる手紙を広げ、三人とも頭を抱えますが、平蔵に伝えるのが先決です。

「長谷川様は船影の忠兵衛の押し込みに警戒して谷口屋の近くにいるだろう」という五郎蔵の言葉を聞いておまさは心底驚きます。

船影の忠兵衛。その人こそ仁三郎の大恩ある人です。

その頃同心の富田を調べていた粂八は「忠兵衛は殺される」と言います

富田と手を組んでいる賊が、押し込みの夜に忠兵衛を殺す心づもりでいることを知っていたからです。

仁三郎の恩人、決意の書き置き、忠兵衛殺害計画

すべてがつながりました。

仁三郎の考えた「自分を捨てる」とはこのことでした。

仁三郎は、賊に混じって忠兵衛を守るつもりでしょう。

なんとか仁三郎を助けたい三人ですが、伴助の隠れ家が分かりません

知る方法はひとつだけ。

富田に聞くことです。

富田と粂八の話を聞いてしまう幸

富田の女房幸が、薬を飲もうと棚を開けると、そこには何枚もの小判が。

富田が伴助から受け取った金です。

出所の分からない金を見つけて怯える幸が、それを富田に尋ねようとしたとき、庭へ粂八が現れました。

粂八は、富田を外へ呼び、平蔵の指図で富田を追っていたことも富田が盗賊に手を貸したのを知っていることも話します。

富田にはもう逃げ道はなく、ならばせめて仁三郎を助けて欲しい。伴助のねぐらを教えてくれと手をついて頼む粂八。

物陰で幸が聞いています

富田が何かを隠していると感じていた幸は、こっそりつけて来たのでした。

決行

仁三郎が伴助の隠れ家へやって来ました。

ここに集まる伴助一味は全部で八人

仁三郎は、あくまで何気なく表戸を閉めると、ドスを抜いて伴助の背中へ突き進みます。

誰かの刀が仁三郎の背中を斬りました。今度は腕を。

刀を持った八人の男に対して仁三郎はドス一本です。かなうはずがありません。

仁三郎は刀をよけようともせず伴助を追います。

盗賊改めが到着した時、仁三郎は突き立てたドスを握りしめたまま伴助に重なって倒れていました。

おまさの声が分かったようです。

「味噌汁うまかった」

それが伴助の最後の言葉でした。

忠兵衛捕縛

一方谷口屋では忠兵衛と配下の者たちが、時間に遅れる伴助らを待たずに侵入を始めます。

引き込みの女と入れ替わりにたなへ入ったその時、提灯の明かりが闇を照らし「火付盗賊改め長谷川平蔵である」

忠兵衛は、手下の男たちにも歯向かうことを許さず、静かに膝をついて両手を前に差し出します。

誇り高き本格の盗賊らしい無血の捕り物でした。

富田の最期

富田の自宅へ向かった同心が発見したのは、富田と幸の遺体でした。

幸が富田に覆いかぶさるその二つの遺体は、富田が先に死んだことを示しています。

幸が富田を斬り、次に自害したのでしょう。

不意をつかれたものか覚悟の上のことかは誰にも分かりません。

ただ、粂八と出て行く時丸腰の粂八に合わせて富田も刀を置いて出かけています。

幸が刀を握って富田を待つ機会はありました。

忠兵衛が仁三郎を追放したわけ

お白洲に座る忠兵衛は、仁三郎が死んだことを知りません

平蔵が「仁三郎という手下がいたか」と聞くと「お縄にかかりましたか?」と聞き返します。

平蔵は「そうではない。真面目に暮らしておった」と答えます。

それを聞いた忠兵衛は、心底うれしそうに「そうでなくちゃ」

佐嶋も酒井も複雑な表情ですが、何も知らない忠兵衛は昔話を始めます。

忠兵衛は、掟を破った者を必ず追放してきたわけではありません。

伴助は人殺しをした後も忠兵衛の下に残っていました。

伴助はそれを「親の代からのつきあいだから」と解釈していたようですが、違います。

忠兵衛は仁三郎に堅気になってほしかったのです。

何度言っても忠兵衛から離れようとしない仁三郎が狼藉を働こうとしたとき、好機と思って追い出したのでした。

「今頃は可愛い女房をもらって幸せに暮らしていることでしょう」

そう言う忠兵衛に平蔵は「そうであろう」と繰り返すのでした。

鬼平犯科帳「一寸の虫」の感想など

おまさの「私たちの足元にはいつも暗い穴が開いている」という言葉が重く響く物語でした。

過去から逃げることは誰にもできません。

自分のしたことは、生涯追いかけて来るもので、それ自体が罰であるとも言えるでしょう。

鬼平犯科帳には早くから平蔵に解決を頼んだほうがよい結果が得られたように感じられる話が散見されます。

でも自分の過去の始末を自分でつけようとする登場人物がとても好きです。

他の鬼平犯科帳スペシャルのあらすじはこちらに 「鬼平犯科帳」