「ナイトクローラー」あらすじ感想-報道の必要性まで考えてしまう映画
映画「ナイトクローラー」は、フリーランスのパパラッチ業に従事する男の物語です。
ああいう動画って、偶然近くにいた人が撮ったものをSNSとかにあげて、それをTV局で買っているのかと思っていましたが、アメリカでは専門の人が実際にいるみたいですね。
2014年アメリカの映画
監督・脚本:ダン・ギルロイ
主演:ジェイク・ジレンホール
ナイトクローラーの登場人物
ルイス・ブルーム(ルー)…主人公
演:ジェイク・ジレンホール
職にあぶれたルイスは警察無線を傍受して事件現場に駆け付け、ショッキングな動画を撮影するという仕事をはじめる
リチャード(リック)…ルイスの助手
演:リズ・アーメッド
ルイスの助手の求人に応募してきた青年
応募時ホームレスだったリックは、見習いとして二束三文の給料で雇われる
ニーナ…ルイスが動画を売るTV局KWLAの女性ディレクター
演:レネ・ルッソ
番組制作において倫理よりも視聴者の目を奪う報道を好む
KWLAのニュース視聴率はロスで最低
フランク…KWLAの編集者
演:ケヴィン・ラーム
良識を重んじる安全志向の男
ローダー…ルイスの同業者
演:ビル・パクストン
事業拡張に際してルイスを誘うがルイスは断る
ナイトクローラーあらすじ
ぱっとしない毎日を送る金のない男ルイスは、スクープ動画が高く売れることを知ります。
早速盗んだ自転車を売ってカメラを買い、カージャックの現場で銃撃された被害者を動画におさめたルイスは、その足でTV局KWLAに向かい、録画を見せて取引します。
抜群の行動力を持つルイスは、毎夜ショッキングな動画を撮影し、すぐに助手を雇えるようになりました。
凄惨な場面、TV局との駆け引き、ライバルとの小競り合いに埋め尽くされた一刻一秒を争う仕事の中、元々道徳心や遵法精神を持ち合わせていないルイスは、エスカレートしていきます。
ナイトクローラーを観た感想
主人公に魅力が感じられないのに映画はいいと感じる珍しい作品。
創作の世界の悪役は魅力的なことが多いですが、なぜかこの主人公は好きだと思えませんでした。
報道の倫理を問う問題作…なのでしょうたぶん。
TV局の女性ニーナが、初心者ルイスに与えたアドバイスが印象的です。
「LAで好まれるニュースは郊外に忍び寄る都市型犯罪で、被害者は白人、加害者は有色人種が望ましい」
ショッキングで残忍な映像を放送させているのは視聴者であると、情報を提供する側はそう思っているのでしょう。
「好まれる事件」や「望ましい悲劇」というものが存在することは認めざるを得ません。
でも、そこに報道としての価値はあるのかと考えると…
映画「ホテルルワンダ」で報道関係者が現地ホテルの支配人に話すことを聞いて以来ずっとずっと心にくすぶっているあの根本的な疑問が蒸し返されます。
ニュース映像にいかほどの意義があるのかと。
「ホテル・ルワンダ」はルワンダの民族紛争の映画です。
世界各地から報道機関が訪れ、紛争中の殺戮場面を撮って放送しています。
ひとりのカメラマンが支配人に「酷な映像を見せてすまない」と詫びると、支配人は、「このニュースが流れれば世界の人々が私たちを助けに来てくれるから、これでいい」という意味のことを言います。
そこでカメラマンは返答するのです。
「来ないよ」
続けて
「ニュースを見る人たちは、一瞬手を止めて『怖いね』と言い、また夕食の続きに戻るだけ」
確かにその通りです。
では、ああした動画は何のため?
事実を正確に伝えたいとき、映像が文字や読み上げよりも有用なのは間違いありません。
それを承知で改めて考えたいのです。
もしもTVニュースがなかったらどうなるのか。
各地の空模様や台風の雲の様子を伝える写真や動画にはおおいに意味がありますが、悲惨な事故の映像がテレビに流れたら事故が減るのか、殺人現場からの中継に何の意味があるのか。
世界的に「報道」と名の付くものはそれ自体が過大評価されているように感じます。
PCだけでなくスマホも持つようになり、今ではほぼ常時インターネットに接続しているも同然の生活をしていながら、情報の価値を疑問視するとはおかしな話ですが、なくても困らない、あっても人を幸せにすることはない情報は確かにあり、注目を集めることだけを狙った衝撃映像はその代表なのでは?
そんなものを撮るために命を懸け、相棒を死なせ、心を捨てる…。
主人公の価値観のバランスは狂っています。
生まれつきそういう人なのか、お金と仕事に不自由している間に変わったのか。
ホームレス暮らしでド貧乏だったリックが最低限のモラルを持ち続けていたことを思うと、元々の資質なのでしょうか。
ルイスの元に集まってきた新人たちのうち何人かはすぐに脱落するでしょうが、残ったメンバーはいずれルイスのようになるのかもしれません。
彼らの中の誰かがルイスの死に顔を録画してTV局に向かう様子が目に浮かびます。
きっとルイスは、それならそれでいいと思っているのでしょう。
「あんまり楽しそうな仕事ではない上に報酬だってたいしたことない風なのによくやるよね」
なんだかんだ言って、これが一番強く感じたことだわ(笑)
リック役のリズ・アーメッド
この人いいですね。
ラッパー兼俳優です。
パキスタン系イギリス人で大学はオックスフォード。
演技がとてもうまいし、顔もいいです。
美男美女は大勢いますが、この人の顔には南アジアらしい神秘性があります。
リズ・アーメッドの他の出演作は、映画「ローグ・ワン」とか
映画「ヴェノム」などなど。
主演した「サウンド・オブ・メタル-聞こえるということ-」は、アカデミー6部門にノミネートされました。
サウンドオブメタルすごくいいですよ。